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2024.09.25
匠の手仕事 鷲巣恭一郎vol.3「お茶染めと茶業とこれからと」
茶業は、静岡有数の産業でもある。その土地柄所以、他の地域よりも、沢山の茶農家がいた。鷲巣さんが着目したのは、茶農家との関係性だった。
「お茶という原料を与えてくれる茶農家へ、どうしたら利益を還元することができるかを考えました。どうしたら、共に盛り上げていくことができるかという視点が必要だったんです。」
自ら茶葉を買い取ったり、宣伝を担うようになった。だんだんと興味を持ってくれる茶農家が増え、これで染めてみて欲しいと、声をかけられることも増えていった。
「1つのきっかけは、代変わりのタイミングだったと思います。新しい発想を持っている柔軟な方達が上に立つようになり、耳を傾けてくれるようになったんです。」

昔は豊かな利益を得ることができた茶業界も、現代は衰退し、売り上げに伸び悩んでいるのが実情だ。
「茶業も、今は本当に好きな人しか残らない。衰退していても継ぐことを選んだ人達には志があるんです。文化的な価値を感じていたり、お茶を通して表現したいものがある。」
21歳で職人の道へ足を踏み入れ、あっという間の日々だった。お茶染めが形になったと実感したのは、26歳の頃だ。それから今日まで、やり続けてきた。必死で仕事を受け、徹夜をしながら、世の中の仕組みを肌で感じてきた。一人で始めたお茶染めは、気がつけば、多くの人を巻き込むようになっていった。
「お茶染めを文化にしようと意識を持つようになってから、周りの反応が変わって来ました。遠い目標に向かって、日々いろんなことが起きている実感が面白かった。目標が漠然としていたから、良かったのかもしれません。初めは自分の頭の中だけに描かれていことが、周りに伝わっていくほど、やりがいが生まれていったんです。」

静岡の地で生まれたお茶染めは、今や全国に普及している。お茶染めの第一人者として、作家として、職人として、新たな文化の入り口に立っている。そして今、鷲巣さんには、新たな展望がある。
「今後は、職人を育てていきたい。伝統技術をきちんと次世代へ継承していくことが大切だと感じています。そして、これからも茶業界と共に、できることを模索していきたい。今、気になっていることは、放棄茶園。茶業が衰退し、放棄茶園も増えています。茶園にある木って、すごく格好いい形をしているんですよ。オブジェにしても味わいがある。そういった物を見直し、新しい価値をつけていきたい。お茶畑を資源として、経済的活性化をしていきたいと思います。文化的、アート的アプローチだからこそ、形にしていけるものがあると信じているんです。」
完