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2024.10.14

匠の手仕事 戸田勝久vol.1「やりがいを求めて、指物と出会う」

日本古来から、私達の暮らしは木とともにあった。

指物とは、木と木を組み合わせて作る家具や建具、木工品などを指す。

外側に組み手を見せず、金釘をつかわない精巧な技法は、コンマミリ単位の狂いを許さないまさに匠の手仕事だ。

指物師である戸田勝久さんは、駿府の工房 匠宿 木と漆 工房長であり、

KOZOU HAKO STYLEを営んでいる。

戸田さんの手から生み出されたものは一目見てわかる。

デザインに突出した特徴があるわけではない。

名が入っているわけでもない。

けれど、削ぎ落とされた静謐な佇まいは戸田さんの作品だと物語る。

「自分の作品を作っているつもりはないけれど、何をどう見せたいかを表現をすると、あの形になっている。名を入れてなくても気づいてもらえるのは、表現した物には匂いが残るからだと思う」

戸田さんがものづくりをする時は、暮らしをイメージをすることから始まる。

シーンやお客さんの所作など、目には見えない要素も思い描きながら一つずつ組み立てていく。

「あえて名を入れることもしなくて良いと思っている。評価をしてもらうのは嬉しいけれど、競いたいわけではない。それよりも、お客さんとのやり取りが嬉しいんです。求められるのは幸せなこと。そこに、僕のやりがいがある」

元々は住宅工務店に勤務。提案営業から現場の指揮まで、仕事内容は多岐に渡った。

けれど、住宅を建てている実感は薄かった。実際に作ったのは職人。

そう思えば思うほど、ものづくりとの距離を感じていた。

「働くにつれ、0から手掛けたいと思うようになりました。分業ではなく、一貫して責任を持ちたかったんです。もっと細やかにお客さんと関わりたいと思いました」

そして、転機がやってくる。家具職人になる決意をし、26歳で退職をした。

「後々、やらなかったことに対して後悔をしたくないと思ったんです。もし失敗をしたとしても、自分で選択したことならば納得ができると思いました」

退職後は木工の職業訓練校へ通い、基本的な技術を学んだ。

「その時の講師の方が、クラシカルな手法を大切にする方だったんです。手加工に重きを置き、本当に手をかける人とはこういう人なのかと思いました。日本古来のものづくりに触れられる京都へ行きたいという思いを、この時に再確認したと思います」

卒業後は、京都へ移り住んだ。現在の京都伝統工芸大学へ入学し、指物を学ぶ。

「工務店に勤務していた時は、北欧家具やデザイナーズ家具に惹かれてきました。けれど、指物を知れば知るほど、日本の工芸が持つ奥深さや技術に魅力を感じるようになりました」

当時、指物業界は先細りだと言われていた。けれど、無くなることはないと思った。

「むしろ、新しい可能性を感じました。継承されてきた技術や精神を学び、それを生かして自分なりのものづくりをしていきたいと思ったんです」

続く