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2025.01.31
匠の手仕事 藤中知幸vol.3「urushiを次世代へ」
独立し、新たな道を歩む藤中さんの活躍は目覚ましい。
静岡県文化奨励賞の受賞や、二年連続で工芸美術日工会展日工会賞の受賞。修行時代に培った技術に無二の感性が加わり、新たな作品が芽吹いていった。

「僕は、和の形に縛られることが合わなかった。リビングに飾ることをイメージしたら、西洋の雰囲気が思い浮かびました。どれも僕が普段使いをしたいと考えて生まれてきたものばかり。一方、壁掛けの作品を作った際は、展示会ではほとんど売れませんでした。けれど、セレクトショップでは手に取ってもらうことが増えていった。そういった作品の動きも学んでいきました」
職人として独立し、生業としていく。その道は決して平坦ではない。
「画家なら抽象画か具象画かなど決まっているけれど、僕の場合は漆を使えば成立する。工芸がしっくりこないから買いません。ではなく、どこかで引っ掛かってくれればいい。いろんなやり方を持っていれば、お客さんの要望に幅広く答えていくことができると思っています」

ものづくりの道を志した時、今の自分は想像できなかったと言う。
「職人とは、手に技術をつけて制作だけに没頭するイメージだったので、まさか美術展をやることになるとは思わなかった。何よりも、周りに恵まれたからやってこれた。僕は運が良かったのだと思う」
職人という枠を超え、活躍が多岐にわたる藤中さんにこれからの展望について尋ねてみた。

「今後は、自分が何を残していけるかを考えていきたい。それが、技術なのか物なのかはまだわからない。先代の使ってきた技術や道具を、次の世代へきちんと渡してあげられるようにしたい。工芸は、使ってみて初めて価値が出る物です。いろんな方の元に届いたらいいと思う。この先、僕自身や作品がどう変化してくのか、とても楽しみなんです」
完