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2025.08.19
匠の手仕事 小割哲也vol.1「魯山人への憧れ」
駿府の工房 匠宿 火と土にて、工房長を務める小割哲也さん。陶芸家として数多くの公募展に名を揚げ、現在は工芸美術日工会理事、静岡県工芸家協会会長を務める。華やかな経歴が印象的ながらも、紆余曲折を経て辿りついた。
「27歳頃まで、調理師として働いていました。陶芸のきっかけは、魯山人への憧れだったと思います」

北大路魯山人は日本の芸術家であり、陶芸家だ。料理は芸術と解釈し、自らも作陶し、美食家として有名だった。
「子供の頃に見ていたアニメ、美味しんぼで主人公の父親が、魯山人をモデルに描かれていました。自分の作った器で料理を出す姿が、強く印象に残っていました」



幼少期は、絵が得意だった。小学2年生の時、ジュニア県展にて金賞を受賞。何を描いても褒められる体験は、芸術への想いを募らせた。
「絵描きを夢みましたが、仕事にするのは難しいと知り、憧れを持ったまま歳を重ねていきました」
大学では、建築学を専攻。初めての一人暮らしで、転機が訪れる。
「自炊生活で、料理の楽しさに開眼しました。僕の母は料理が苦手な人だったけれど、自分では想像以上に美味しくできたんです。作業の面白さを実感し、のめり込んでいきました」



大学院を卒業後、思わぬ壁にぶちあたる。体調を崩し、内定が取り消しになった。
「体調を整えながら、自分ができることを考えていきました。何を生業に生きていくのか見つめる中で、料理の楽しさを思い出したんです」
続く