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2025.08.26

匠の手仕事 小割哲也vol.3「公募展への挑戦」

 

29歳の時、公募展に出してみようと思い立つ。すぐに、富士の市民展に応募した。それから1年後、初めての個展を開催する。

 

 

「数が必要だったので、器や花器を作って展示、販売をしました。経験がなく良し悪しの物差しが曖昧だからこそ、勢いがあった。人前に出すことの大切さを実感しました」

 

 

次の年に、初めて日本美術展へ応募し、落選した。日本美術展は日展と呼ばれ、100年以上の歴史を持つ、日本を代表する公募展だ。挑戦を続け、3回目で初入選を果たした。

 

「入選した日展を見にいくと、自分より上にいる人が遥かに多くて打ちのめされました。幼い頃から美術は得意だと思ってきたけれど、大したことがなかった。よく考えれば当たり前だ。と、冷静な自分もいました」

 

それからも、公募展へ応募し続けた。入選も増え、少しずつ手応えが増えていった。

 

「何を作ろうかと考える時間は、修行そのもの。技術が上手くなればなんとかなると思っていたけれど、上達すればまた違う悩みが生まれます。けれど、その悩みが個性になり味わいになっていく。僕は、公募展に育てられたと思います」

 

現在、小割さんは日本美術展準会員(※)。何度も挑戦し続けた結果、辿り着いた称号だ。

 

「挑戦し続けて、作品は確立していきます。努力なしには、成り立たない。出来上がったものがよくなるにつれて、仕事も変わっていきました。育ててもらった結果、環境が変わったんだと思います」

 

後進を育てる側となった今も、公募展に出すことを勧めている。

 

「ものづくりを志すならば、どんどん応募した方がいいと思う。まだすごい作品は作れないと断念する人が多いけれど、最初から展示会にふさわしい作品ができることはありません。入選した時の喜びは大きなものですが、それ以上に自分の技術や感性を育てることができます」

 

 

続く