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2024.10.22

匠の手仕事 戸田勝久vol.2「暮らしに馴染むものづくり」

戸田さんは、ものづくりが好きな子供だった。

「部屋の模様替えや家具、インテリアが好きでした。物を通して空間を作るという発想は、元々あったかもしれません。僕のものづくりは、使うことが大前提。指物と聞くと、特別な枠にあるものだと思われがちですが、過去に生まれたものを現代に呼び起こすために、伝統工芸品というフレームをつけてしまっているだけ。本来、暮らしに馴染んできたもので特別なものではありません」

26歳で職人の道へ入り、直実に実績を積み重ねてきた。

京都伝統工芸大学を卒業した後は、静岡へ帰省。独立を目指し、木工所で5年間勤務をした。

「勤務中は木製小物を中心に手がけ、休日は自分が作りたい指物を作っていました」

この時に、家具指物の職人である名波さんの工房へ遊びに行くようになる。そして、間借りの提案をもらったことをきっかけに独立をした。

「全てはご縁で成り立ってきました。今は、匠宿に工房を構えるようになり、多くの方とお話しができる機会が増えました。今まで関わってきた方々に、ここにいると薄らと伝わっているとしたら嬉しいです」

これまでの経緯を尋ねるたびに、印象的な言葉がある。「整えてきた」という言葉だ。

「自分の環境を整えてきたら、今の自分になっていた。職人として、人と同じことをやっても自分の価値を高めることはできない。だからこそ、自分が納得できる領域の物差しを持つことが必要なんだと思います。」

戸田さんにとって、ものづくりとは何でしょうか。と、尋ねてみた。

「僕にとって、ものづくりは精神安定剤のようなもの。やりがいと同時に、没頭できる喜びがある。そして、自分の個性を外に発信するメッセージでもあると思います」

続く