Izumigaya

お知らせ

News

2024.10.29

匠の手仕事 戸田勝久vol.3「KOZOUのように純粋に」

工芸の宿 和楽の近隣には、シンプルズという創作レストランがある。
純度の高い素材にこだわり、シェフの感性のままに彩られた一皿が魅力のレストランだ。

このコース料理の最後の一皿に、戸田さんの菓子箱が使われている。

「話をいただいてすぐには、良いアイディアが浮かびませんでした。シンプルズは、発想や試みが個性的なレストラン。井上さんは、ものづくりはすぐにできるものではないと理解をしてくれているので、じっくり取り組ませてもらいました」

何度も話し合い、材料選びから始めた。

菓子箱に選んだ原料は、神代杉だった。

神代杉は、希少性が高い古代の埋もれ木。腐らずに掘り起こされた神秘的な原料だ。

「グレーがかった色味や神秘的な背景が、こだわりや探究心が強いシンプルズにぴったりだと感じました。菓子箱の形は、お客さんが帰った後にカウンターにスポットが当たった際のイメージを膨らませていきました。お店のライトや影を思い浮かべ、どんな佇まいのものが一致するか手繰り寄せていきました」

コース料理の最後に、戸田さんの菓子箱が佇む。
和紙で設えたカウンターの上、ライトで照らされた菓子箱は控えめながらも印象的だ。

「井上さんは、ものづくりの同志。時間をかけてでも、胸を張ってお渡しできるものを渡したいと思いました。一人の作り手として、同じ土俵で戦っているからこそ中途半端なものは渡せないと思ったんです」

戸田さんが名付けたKOZOU HAKO STYLEという名には、さまざまな想いが込められている。

「KOZOUとは、子供心を指します。彼らには、表現の制限や正解がありません。ものづくりは、そんな純粋さが大切。大人になり、自分が表現したいものをコントロールできるようになりました。けれど、内側から湧き上がるものは表現し続けていきたい。僕にとってKOZOUとは、表現者の象徴なんです」