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2025.01.17

匠の手仕事 藤中知幸vol.2「職人から、芸術の道へ」

駿河漆器の第一人者、鳥羽漆芸と出会い、飛び込んだものづくりの道。

藤中さんは、いつか独立することを目標に黙々と制作を続けてきた。

「初めは比較対象がなかったので、上達しているのかわからなかった。師匠には、常に時計を見て仕事をしなさい。と、言われていました。自分のペースを確認する癖がないと作り続けるのは難しい。工房は婚礼家具などの特殊な依頼も多かったので、技術や考え方を培える機会が多かった。同じ商品を作るだけでなく、臨機応変にどう対応していくか。繰り返すうちに一連の作業としてできるようになっていきました」

33歳を迎え、鳥羽漆芸を独立した。修行期間は13年。今でも、週に一度ほど顔を出している。

「3代目の師匠は、工房の仕事だけではなく、外で自由に活動することを容認してくれる方でした。様々な縁と巡り合わせがあり、独立する流れになっていったんです」

藤中さんは、クラフトマンサポートの初期メンバーだ。

クラフトマンサポートとは、静岡市で行われている地域産業活性化と後継者育成のための事業だ。藤中さんは試験運用として関わり、修行を続けてきた。

そして、静岡市を拠点とする若手職人グループ、するがクリエイティブへの加入をきっかけに、職人としての依頼だけでなく自身の作品を作る機会が増えていった。

「初めての作品は、駿府楽市での出展でした。僕は、木の箸と一輪挿しに漆を塗りました。それまでは師匠に振られた仕事をしてきたので新鮮だった。今まで培ってたことを生かして、0から制作をするようになりました」

さらに、松坂屋静岡店で開催された伝統産業工芸展での入選をきっかけに、活動の幅は広がっていった。その活躍の背景には、あるアドバイスがあった。

「作ったものは、外で人目に晒しなさい。誰かに必ず見てもらって、評価を受けなさい。自己満足ではいけない。蒔絵の先生からいただいた言葉です。僕が幸運だったと思うのは、一番最初に出展したものの結果が良かったこと。最初に大きな挫折がないと持続しやすい。運が良かったと思います」

続く